有名な飛鳥の石舞台古墳から東に向いて、どんどん山道を上がって行くと、奈良県桜井市多武峰(とうのみね)の山奥にある「談山(たんざん)神社」に辿り着きます。
ここは、本殿裏山の談い山(かたらいやま)にて、中大兄皇子(後の天智天皇)と中臣鎌足(後の藤原鎌足)が、大化の改新について、極秘の談合を行ったことで有名ですが、それ以外にも、奈良県屈指の紅葉の名所としても知られています。
紅葉の見頃は、例年11月中旬~11月下旬で、この時期には、夜間のライトアップも行われています。
…ということで、今から談山神社は、観光客でいっぱいになります。
特に週末は、周辺で渋滞が起きることも…。
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また、談山神社の御祭神は、藤原鎌足公ですが、この神社の歴史は、それだけではなく、平安時代末期から戦国時代にかけて、主に興福寺と争った戦乱の時代もくぐり抜けていて、その当時の石垣も残っています。
このように、紅葉+藤原鎌足公+戦乱の時代…と、談山神社には、見どころが盛りだくさんなのです!
そこで、2019年9月17日の観光客が少ない時期に、じっくりと拝観した時のレポとともに、2015年11月22日に訪問した時の紅葉の写真を交えながら(あんまり色づきが良くなかった年ですが)、談山神社の観光のツボ三つを押さえつつ、ご案内していきたいと思います。
- 談山神社へのアクセス
- 談山神社とは
- 談山神社のツボ①西入山受付に向かう途中に…中世の歴史が!
- 談山神社のツボ②鎌足公を祀る本殿・拝殿からの眺めは見事!
- 談山神社のツボ③絵になる!十三重塔と見どころ満載・神廟拝所
- その他みどころ(パワースポット・縁結びの神様)・現代編
- その他のおすすめポイント
- まとめ
談山神社へのアクセス
近鉄大阪線桜井駅及びJR桜井線桜井駅から、バスで約25分です。
奈良交通バス・桜井駅南口~談山神社(終点)下車徒歩5分。
9kmほどあるのですが、途中から信号がほとんどないため、山道のわりには早く着く印象です。
ただし、本数は非常に少ないので、時刻表を見て計画的に乗車するか、人数が多ければ、タクシーを選択するのも有りだと思います。
また、駐車場は200台分あり、全て無料です。
ただし、紅葉シーズンの週末はこれでも足らず、並んでいます。
回避するためには、早朝に行かれるのが一番だと思いますが、例えば、私が行った2015年11月22日の時は土曜日でしたが、談山神社に着いたのが、14時半ごろで、全部見終わっても、ライトアップには少し早い…という中途半端な時間だったためか、ほんの10分ほどの待ち時間で駐車場に車を停めることができました。
いずれにせよ、混雑するということを念頭に、プランを考えることをおすすめします。
《談山神社・拝観情報》
所在地 〒633-0032 奈良県桜井市多武峰319
電話番号 0744-49-0001
拝観時間 8時半~17時(受付~16時半)
通常拝観料 大人600円 小学生300円
☆2019年のライトアップ期間 11月9日(土)~11月24日(日)
(最終受付18時半・建物拝観19時まで・19時~20時は庭鑑賞のみ)
※また今年(2019年)は、鎌足公没後1350年に当たるため、11月17日の鎌足公命日の「例大祭」は、例年になく観光客が多いかもしれません。
談山神社とは
創建当時は「妙楽寺」という名前のお寺でした。
社伝によると、藤原鎌足の長男定慧(じょうえ)和尚が、父の死を聞き、留学中の唐から帰国し、十三重塔を建てたことが始まり、と言われています(678年・飛鳥時代)。
また中世~明治時代の廃仏毀釈までの間は「多武峰(寺)」と呼ばれていました。
そして中世に、多武峰の宗派が変わったことから、同じ藤原氏ゆかりの寺である興福寺との壮絶な争いが長らく繰り広げられ、その都度、多武峰は焼かれる…という歴史を繰り返してきました。
現在残っている建物は、江戸時代に再建されたものが大半です。
明治初期の廃仏毀釈により、寺院の仏教色を排除して「談山神社」となりました。
ざっくり言うと、こんな感じです。
つまり創建以来、約1300年の間に、寺のあり方を、時代に合わせて変化させつつ、生き残ってきた神社…だと言えます。
談山神社のツボ①西入山受付に向かう途中に…中世の歴史が!
では、クマ子的談山神社のツボその①です(笑)。
正面入山受付から鳥居をくぐり、しばらく行くと左手に、西入山受付に向かう道が見えてきます。
その辺りに…何と、ご立派な石垣!があります。
神社に石垣Σ(゚Д゚)⁉
この石垣は、中世の時代、多武峰の僧兵たちが、興福寺からお寺を守るために築いたものです。
また、その後の戦国時代にも幾度となく、大名たちによる大和の闘争の舞台にもなっています。
近くで見ると、戦国時代のようなものものしさが伝わってきます。
現代の宗教のあり方を見ると、この時代に、各寺が僧兵を繰り出して、戦乱に明け暮れていたことには違和感を感じます。
しかし、平安時代の半ばごろ、摂関政治が全盛期になってきた頃から、中央政府にいた貴族たちが、穢れを忌み嫌い、自ら軍事力を持つことをやめてしまいました。
現代で言うなら、警察も自衛隊も存在しなくなるような状況ですね。
そうなると、社会秩序は乱れに乱れ、皆、自分の身は自分で守らざるを得なくなります。
悪いことをやっても、それを裁く法律すら機能せず、財力と武力を持つ者だけが生き残っていけるような、壮絶な時代の遺跡でもあります。
あまり触れられることがない、談山神社の石垣ですが、せっかく行かれたなら、ぜひ「石垣萌え?」してみてください(笑)。
※地図A
談山神社のツボ②鎌足公を祀る本殿・拝殿からの眺めは見事!
さて、談山神社のツボその②は、本殿・拝殿です。
江戸時代の再建ながら、見事な建物が残されています。
左手の赤い建物は、西宝庫(重要文化財)です。
ここから靴を脱いで、右手の拝殿に上がります。
何と、拝殿内は、写真撮影OKです!
建物も素晴らしいのですが、何と言っても目玉は「多武峰縁起絵巻」です。
中大兄皇子と中臣鎌足が、大化の改新について秘かに、談い山で話し合っている絵です。
これが、間近で見れるんです!
こちらは、かなり有名ですね。
御簾のところまで、入鹿の首が飛んでいます( ゚Д゚)ヒ~
かなり、リアルです!
蘇我入鹿が、父・蝦夷のもとに無言の帰宅をしている姿が描かれています。
飛鳥時代の激動の歴史を垣間見ることができて、ドキワクでした( *´艸`)
☝手前の左手は次男・不比等、右手は長男・定慧です。
他にも、いろいろな絵画などが展示されています。
拝殿からは、鎌足公が祀られている本殿を拝むことができます。
写真が上手く撮れてなくて、ごめんなさいなのですが…
日光東照宮造営の際のお手本にされたという、極彩色豊かな本殿(重要文化財)です。
とても、煌びやかなことがわかっていただけますでしょうか(汗)。
※地図B
また、高台にある拝殿からの眺めは最高です!
吊り燈篭が、とてもいい風情を出してくれています。
さらに、紅葉シーズンなら…☟
ここの回廊は、絶好の撮影スポットです♪
階段下から、拝殿を眺めると、こんな感じです。
拝殿を支える柱☟
紅葉シーズンの拝殿付近☟
拝殿は、中に入っても外から眺めても絵になる、談山神社屈指の観光ポイントです(*'▽')
※地図C
談山神社のツボ③絵になる!十三重塔と見どころ満載・神廟拝所
談山神社と言えばコレ!
十三重塔を思い浮かべる方も、多いのではないでしょうか。
まさに、談山神社のシンボル!です。
木造としては、世界で唯一の十三重塔(重要文化財)だそうです。
どこから見ても、絵になります。
※地図D
この十三重塔は、藤原鎌足の長男・定慧が、父の冥福を祈って建てた…と言われていますが…
ここで、ひと言。
史実では、定慧は、父・鎌足がまだ元気に存命中に、23歳の若さで亡くなっています。
なのに社伝(鎌倉時代成立)は、史実と食い違っています。
この辺りの謎には、いろいろな理由が、ありそうですね(-_-;)
さて、目玉ポイントの最後は「神廟拝所(重要文化財)」での、宝物展示です。
この中に、いろいろな宝物が置かれているのですが、こちらも写真撮影OKなのです!
特別公開時以外は、布で覆われていますが、傍に行くと、うっすらと姿がわかります。
他にも、
いろいろと安置されているのですが…
☝この中には、特別公開時のみ見ることが出来る秘仏があります!
戦乱の世をくぐり抜けてきた談山神社に、唯一残る仏像だそうです。
度々、寺が焼かれる中で、どれだけの想いで守られてきたのか…と感じ入ってしまいます。
この神廟拝所も、談山神社に来られたら、忘れずに入ってみてください(^ ^)
※地図E
尚、神廟拝所の西側には「けまりの庭」があります。
※地図F
中大兄皇子と中臣鎌足が、蹴鞠会において初めて顔を合わせた…という故事をもとに、現在では、4月29日と11月3日に、けまり会が行われています。
また、この庭の西側にも、見事な建物があります。
※地図G
江戸時代の造営ながら、何とも味のある建物です。
中に何かある⁇
大きいのでびっくりしますが、日本書記の記録をもとに、けやきの一本彫りで作られた「福禄寿大神」だそうです(;^ω^)
※地図H
また、西入山受付あたりには、こんなかわいい手水鉢があります☟
その他みどころ(パワースポット・縁結びの神様)・現代編
パワースポット?竜神社
十三重塔の西側にある権殿(重要文化財)。
※地図Ⅰ
さらにその西側には、またまた趣のある建物があります。
※地図J
その奥に、1300年の歴史にはあまりふさわしくない看板が…
パワースポット⁉
なんだか、近年になってからの後付けのようにも思えますが…"(-""-)"
でも安心してくださいね。
本当に、パワースポット感はあります(笑)。
神秘的な談らい山、恐るべし(;'∀')
尚、この比叡神社辺りの山道から、鎌足公の墓所に登ることができます。
徒歩約20分だそうです。
※地図K
摂社・東殿(恋神社)恋愛の神様?
拝殿から出て、東に向かって歩いて行くと「 摂社・東殿(重要文化財)」に出ます。
ここには、鎌足公の妻であった鏡女王(有名な額田王の姉)が祀られていることから、恋の神さま?になったらしく、どうやら現代になってから様相が変わった気配がアリアリです(;^ω^)
など、いろいろございます(;・∀・)
鏡女王はもともと、中大兄皇子に寵愛されていた采女だったのですが、その後、鎌足の妻になっています。
そんな経緯があったものの、鎌足との夫婦仲は良かったようで、現在は縁結びの神様として信仰を集めています。
この恋神社目的で、ここまで来られる方もいるほどです。
※地図L
しかし、私的に気になったのは、その後ろにある「観音堂」。
傍まで、近づいてみると…
「縁切り祈願(特に女性)」と書かれています…!
縁結びに縁切り…談山神社、至れり尽くせりですね(;^ω^)
※地図M
その他のおすすめポイント
後醍醐天皇寄進の石燈篭も!参道~鳥居まで
各駐車場やバス停から、正面入山受付に向かって参道を歩いていきます。
お土産物屋さんが並んでいるのですが、紅葉や桜の時期以外は、こんな感じです(;^ω^)
そして、燈篭が並ぶいい雰囲気の中を歩いて行くと…
ひときわ目立つ大きな燈篭が見えてきます。
とても、風格があります(^^)
鎌倉幕府を滅ぼしたものの、足利尊氏に追い詰められて、奈良の吉野に逃げて、南朝を作ったと言われる後醍醐天皇が寄進した…と伝えられているそうです。
※地図N
そのまま、樹齢300~500年の杉の大木が並ぶ参道を歩いて行くと…
到着しました!
手水舎があります。
左手が、正面入山受付です。
赤い鳥居が、緑に映えて、とても綺麗です(*'▽')
二重の鳥居にソソられる⁉三天稲荷神社
最後のおすすめは、恋神社の、さらに奥にあります。
山道に入る手前にポツンと…二重の赤い鳥居があり…
何やら、ソソられる内容の看板が…
なぜ、この場所に稲荷社があり、菅原道真公が御祭神なのかは、よくわかりませんが…
「商売繁盛・学業成就」と言われると、行きたくなるんですよね(;^ω^)
この先の山道は、人の気配がなくてちょっと怖いけど、勇気を出して行ってみました。
誰もいない山道…
5分で着く…と書いてあったけど、このままだと怖いな~と思っていたら、一人の女性の方とすれ違ったので、ホッ…(;´Д`)
しばらく歩くと、何やら…見えてきました。
すごい、あばら屋………
その奥に、御祭神がおられました。
不思議感満載の稲荷社でしたが、霊験あらたかそうな山中で、たくさんお祈りして戻りました(笑)。
この奥の山が、件の「談い山」のようです。
※地図O
《参考文献》
・「奈良県の歴史散歩 上巻 奈良県北部 奈良県高等学校 教科等研究会歴史部会編 山川出版社」
・「奈良まほろばソムリエ検定 公式テキストブック[改定新版] 網干善教 監修 奈良商工会議所 編 山と渓谷社」
・「奈良 寺社探訪ベストガイド イデア・ビレッジ メイツ出版」
・「天風の彩王 藤原不比等 黒岩重吾 講談社文庫」
・「応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱 呉座勇一 中公新書」
・「逆説の日本史⑧中世混沌編 井沢元彦 小学館文庫」
・「天上の虹 里中満智子 講談社」
・談山神社発行公式パンフレット
まとめ
いかがでしたでしょうか。
奈良県の中部にあり、交通の便は少しよくないですが、充分に行く価値のある神社です。(*'▽')
紅葉の名所で名高い「談山神社」の、それ以外の魅力もお伝えできていれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました<(_ _)>
※この記事内の情報は、2019年9月17日現在のものです。実際に行かれる際には、最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。