前回までの記事で、大和国一ノ宮である大神神社(奈良県桜井市)周辺をご案内させていただきました☟
今回は、大神神社から、5kmほど南に行ったところにある「聖林寺」というお寺をご紹介します。
一見、大神神社とは関係なさそうに見えるのですが、実は、聖林寺にある、大変有名な国宝が、大神神社と深い繋がりを持っているのです。
そもそも「聖林寺」とはどんなお寺?
もともとの縁起として伝わっているのは、藤原鎌足の長男・定慧(じょうえ・643~665年)が創立した…ということです。
御破裂山(ごはれつやま)の山麓に立つことからも、そもそもの始まりは、藤原鎌足をご祭神としている「談山神社」との繋がりが深いものと思われます☟
一説では、多武峰妙楽寺(談山神社の前身)の境外仏堂となった…とも。
その後、平安時代に、興福寺の僧兵に焼かれて一時衰微しました。
中世の頃は、興福寺と多武峰の僧兵が、激しい争いを繰り広げていたからです。
鎌倉時代になると、慶円(けいえん)上人が、弟子の性亮玄心とともに、再興に尽力し、三輪にあった平等院遍照院を移したのが、現在の寺院の始まりと言われています。
主に、安産・子授け祈祷で知られるようになります。
聖林寺のご本尊は「子安延命地蔵菩薩」です。
その後、明治初期の廃仏毀釈の嵐に呑まれ、廃絶されてしまった大神神社の神宮寺「大御輪寺(だいごりんじ)」より、聖林寺に移された「十一面観音立像」があります。
この仏像が、あまりにも有名な国宝なのです✨
高台からの素晴らしい眺めも見れる「聖林寺」境内
《聖林寺拝観情報 》
所在地 〒633-0042 奈良県桜井市大字下692
電話番号 0744-43-0005
拝観時間 9時~16時半
拝観料 大人400円 小学生200円
但し、11月の曼荼羅公開中は→大人500円 小学生250円
年中無休
※尚、伽藍奥にある「大師堂」は、毎月21日のみ公開(堂内は非公開)
公共交通機関でのアクセスは…
近鉄・JR桜井駅より、奈良交通バスにて「聖林寺」下車
聖林寺の下手にある駐車場から、案内に沿って、道を登っていきます。
けっこう急な斜面に沿って、お寺があります。
石垣の上に建っていますね。
この堅牢さは、多武峰妙楽寺の境外仏堂だった頃の名残でしょうか。
お寺というより、まるで山城のようです。
攻め寄せてくる、興福寺の僧兵からお寺を守るのに必要だったのでしょう。
さらに、入口の門まで、幅の広い階段を登っていきます。
入口の門に到着しました。
実は、この門の右手は、石垣の端っこになっています💦
なので、こんな眺望を見ることができます✨
右手の奥には、大神神社のご神体山である三輪山が見えます。
もしも誰かが、攻め寄せてきても、一目瞭然ですね(;・∀・)
縁側からは、美しい景色が見れます。
桜が満開だと、さらに素晴らしいでしょう(訪問日は、2020年3月21日)♬
お庭は、かなりコンパクトな印象です。
さて、聖林寺の本堂です。
この本堂の、向かって左手に社務所があり、拝観料を払います。
御朱印の受付も、お守りの販売もされています。
ところで、前述の通り、この聖林寺のご本尊は「子安延命地蔵菩薩(江戸時代)」です。
画像が不鮮明で申し訳ありません💦
…が、この「子安延命地蔵」は、大和第一の大きさを誇る「丈六石仏」となっています。
高さは、約2mもあります。
このご本尊だけでも、かなりの見ごたえがあります!
子授けの地蔵さまなので、以前ご紹介した「帯解寺(奈良市)」と通ずるものがありますね☟
この本堂の縁側から見える景色が、さらに素晴らしいのです。
本堂の廊下から、振り返ると、こんな風景☝
ミロのヴィーナスにもたとえられる国宝「十一面観音立像」
では、本堂を出て、この「聖林寺」の国宝を見に行きましょう!
「十一面観音立像」さまに会うためには、観音堂へと続く、階段を登っていきます。
階段を登り切ったところには、小さな赤い鳥居が…
この観音堂の守り神でしょうか。
何やら、石碑も立っています。
そして、観音堂の正面に到着!
もちろん、堂内は撮影禁止です💦
この中の国宝「木芯乾漆十一面観音立像」は、天平時代の作品で、760年代に、願主を智努王(天武天皇孫)として、東大寺の造仏所で造られた…という説が有力だそうです。
もともとは、大神神社の神宮寺であった大御輪寺の本尊だったらしいのですが、大御輪寺は明治の初めに廃寺となっており、現在は、大神神社の摂社で「若宮社」とも呼ばれる古事記ファンの方にお馴染みの「大直禰子(おおたたねこ)神社」になっています。
「大直禰子神社」について、詳しくはコチラ☟
この「大直禰子神社」に、聖林寺の十一面観音立像があったと想像しながら参拝すると、大神神社に行った時、また違う見方が出来ると思います。
廃仏毀釈の嵐から守られた「十一面観音立像」は、この聖林寺で「秘仏」として扱われていました。
しかし、明治19年に「国宝」という概念を作り、国宝制定のための調査を行った明治政府のお雇い外国人であり、東洋美術史家でもあったフェノロサが、この聖林寺にも訪れ「十一面観音立像」の秘仏の禁を解きます。
相棒は、岡倉天心。
フェノロサと岡倉天心は、法隆寺・夢殿にある、安置されてから約1000年以上もの間、僧ですら見たことがなかった「秘仏・救世観音像」を開扉させたことで、あまりにも有名ですね。
そのフェノロサは、この「十一面観音立像」を激賞。
また、大正時代の哲学者として有名な和辻哲郎も「古寺巡礼」という著書の中で、天平彫刻の最高傑作!と、誉めたたえました。
国宝指定としては、明治時代の旧国宝制度の時も、昭和26年に新国宝制度が出来た時も、第一回の指定で国宝に指定されているという、まさに「国宝の中の国宝」といえます。
その「木芯乾漆十一面観音立像」☟
またもや、不鮮明な画像で申し訳ありません。
…が、公式サイトの写真で見ても、ぱっと見た時の印象は、少しぽってりとした菩薩様かなぁ~と思うのですが…
実際に見ると、そのプロポーションの良さに、視線が釘付けになります❕
本当に、スタイルが良くて、うっとりします(´艸`*)
見てください、この美しい手❣
不謹慎を承知で言わせていただけるのなら、「こんなスタイルになりたい!」と思います(;^ω^)
ミロのヴィーナスとも比較される…というのにも、納得できる美しさです。
写真と実物の印象があまりにも違うため、できるのであれば、本当に実際に見ていただきたい仏像です✨
また、十一面観音のご利益は、10種類の現世利益と4種類の後世利益があると言われ、ありとあらゆる現世の苦しみ(病気・怪我・貧困・飢え・人からの恨みなど)から救い、極楽浄土に生まれ変わらせてくださる…とされています。
実はこの夏、東京で見ることができます!
そんなこと言われても、奈良までなんて行けません…と思われた首都圏のあなた(笑)!
実は、十一面観音を収納している観音堂改修のため、その間、史上初めて、奈良県からお出ましになることに。
なんと「東京国立博物館」で展示されます。
ただし、コロナの状況次第ですが…💦
期間は、2020年6月16日~8月31日までです。
現在の状況では、ものすごく微妙…(;´Д`)
本来ならば、オリンピック開催中に世界中からやってくる外国人観光客の方たちをターゲットに、この期間に展示されるという計画だったようです。
すべては、コロナ次第です…。
特別展「国宝聖林寺十一面観音・三輪山信仰のみほとけ」についてはコチラ
※クリックしていただければ、十一面観音像の全体像が見れます☝
コロナ終息後のこういったイベントについては、再び開催されるまではしばらくかかりそうだし、開催されたとしても、従来とは違って、人数制限を行うなど、いろいろな対策が迫られそうですね(>_<)
《参考文献》
まとめ
今回は、奈良県桜井市の山手にある「聖林寺」にある、珠玉の国宝「木芯乾漆十一面観音立像」をメインにご紹介させていただきました。
また、どうやら、奈良県内の選りすぐりの十一面観音像を所有する、八つのお寺合同(聖林寺を含む)で、「八十八面観音巡礼」というプロジェクトも発足しているようです。
法華寺が所有する光明皇后の姿を映したといわれる観音像や、高さ10mもの大きさで知られる長谷寺の観音像など、ホームページのトップページだけでも、眼福を受けることができますので、よろしければ覗いてみてください☟
一日も早くコロナが終息し、再びこれらの観音さまを見に行ける日を心待ちにしております✨
※最後までお読みいただきありがとうございました<(_ _)>